大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和35年(ネ)1078号 判決

控訴人(被申請人) 株式会社小畑鉄工所

被控訴人(申請人) 大西勝治 外二九名

主文

原判決を取消す。

被控訴人等の仮処分申請は、いずれも却下する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は、主文同旨の判決および仮執行の宣言を求め、被控訴人等代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述および証拠の関係は、つぎに記載するもののほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(一)  控訴代理人の主張

(1)  被申請人等に対する本件解雇は控訴会社の事業廃止解散の結果であり、控訴会社が事業廃止、解散のやむなきに至つたのは、従業員間のあつれき、これに伴う事業場における秩序の乱れ、生産能率の低下、さらには技術的に優秀な中堅従業員の多数退職が原因となり、当時の控訴会社代表取締役であつた小畑稔が経営意欲と自信を喪失したことによるものである。そうして右従業員間のあつれきというのは控訴会社従業員約七〇名の中で、技術的にも程度低く年令的にも若く、農家子息や子女としてまだ世帯ももつていない者等が大部分をしめる組合員の人達五五名と、その余の二〇名ばかりの会社の係長級以上の者や事務系の人達が多い非組合員(うち九名位の平工員を含む。)とが、まつ二つにわかれていがみ合い、いざこざが絶えなかつたもので、そのいざこざの例としては、つぎのような諸事実がある。

(イ)  昭和三四年の春季闘争のさい、非組合員二名が便所で組合員から暴行をうけ、刑事々件として傷害罪で起訴された者もあつた。

(ロ)  組合員等全員の間で、非組合員を友達に持たない旨の誓約書をとり交し、非組合員との絶交を方針としていた。

(ハ)  作業中にも、非組合員が係長等として指揮した仕事は組合員は応ぜず、又はサボリ、組合員が頼むと仕事をするというようなことがあり、非組合員が作業上組合員に注意を与えると、却つて組合員がその非組合員をとりかこんで抗議するというように、職場作業中にすら双方の反目が持ちこまれ、作業場の秩序が守られていなかつた。

(ニ)  作業中の非組合員に組合員が物を投げて作業を妨害するというようなことがあつた。

右のような職場の状態で、生産能率が低下したのは当然であり、前記小畑稔が漸次経営意欲を沮喪して来たところ、昭和三四年年末から三五年年始にかけての休暇中に、従業員中技術的にも地位的にも会社の重要な従業員であつた非組合員等が次々と退職届を出し、これを慰留し得ざるに及んで、昭和三五年はじめ頃小畑稔は完全に経営意欲を喪失したのである。

(2)  本件解雇は、企業廃止のために、その必然的帰結としてなされたものであり、その企業廃止は、まず代表取締役社長小畑稔によつて決意され、取締役会で、小畑社長ほか取締役三名出席の上その方針が決定され、更に昭和三五年一月二九日開催された株主総会において株主等全員の賛同により解散の決議がなされたものであるが、その手続や決議方法に何らの瑕疵がなく、またその決議内容は法令、定款に反するものではないから、無効ではない。すなわち右各決議の内容は、取締役会においては「解散(事業廃止)の方針」の決定であり、株主総会においては「会社を解散する」こと自体であり、「企業の廃止」や「解散」自体が法令に違反することはあり得ない。そうして本件解散決議に加わつた株主各自の議決権行使の動機如何も、もとより右決議の効力に何等消長をきたすものではない。

(3)  仮に本件解散決議に無効の事由が存するとしても、解散決議の無効は独立の訴によらなければその効力は生じないから、その無効確定前に解散決議の無効を前提として、解雇の効力を停止し、控訴人に賃金の支払を命ずる仮処分をなすことはできない。

(4)  控訴会社は真に事業廃止を意図して解散に至つたものであるから、昭和三五年一月五日取締役会において本件解散方針決定の後一日も早く完全な清算手続を完了するため、つぎのような事実上手続上の処置をとつたが、被控訴人等の妨害により、清算事務は停止された状態となつている。したがつて、被控訴人等主張のような趣旨で解散がなされたものとは到底考えられない。

(イ)  昭和三五年一月 七日 工場閉鎖、従業員に対する事業廃止及び解雇の意思表示。

(ロ)       一月 八日 文書により解雇通知、所定退職金を各人宛発送。

(ハ)       一月二九日 午後三時より株主総会を開き、解散決議および清算人選任。午後六時より清算人会を開き、清算事務処理方針決定。

(ニ)       二月 一日 解散登記。代表清算人より組合へ工場明渡書状発送。

(ホ)       二月 二日 三洋電機株式会社より貸与機械返還要求。

(ヘ)       二月一〇日 裁判所へ清算届。

(ト)       二月一一日 官報へ解散公告(第一回)。三洋電機株式会社へ機械返還猶予願。

(チ)       二月一六日 組合に対し機械搬出妨害禁止仮処分申請。

(リ)       二月一七日 同仮処分決定。(たゞし事実上妨害され搬出できず。)

(ヌ)       二月一八日 官報へ解散公告(第二回)。

(ル)       二月二〇日 株主総会(計算書類承認)。

(ヲ)       二月二五日 官報へ解散公告(第三回)

(ワ)       三月 一日 組合より申請の清算手続停止、代表清算人代行者選任の仮処分決定あり。

(カ)       三月 九日 清算人より申請の工場の執行吏保管妨害排除の仮処分決定(ただしピケにより執行中止)。

(5)  現行憲法秩序は、一方で私企業廃止の自由を認めつゝ、一方企業の存続―労使関係の存在―する限り、労働者に所謂労働基本権を保障するものと解さねばならない。即ち、憲法二八条は、私企業所有者が私企業を継続する限り、労働者に右権利の保障されることを要求しているのであつて、それ以上に、労働者の基本権のために労使関係を継続すること―私企業を継続すること―までを要求するものでは断じてない。もし、そのようなことを認めるとすれば、資本制の根本的支柱をなす私企業活動の自由を否定され、かえつて、私企業所有者へ私企業継続の義務を課すこととなるのであり、かゝることが現行法秩序として憲法の規定するところとは到底解せられないのである。本件の場合、会社経営者が私企業の廃止を決意したについては、所謂倒産状態と称せられるような深刻な事態があつたわけではないけれども、本来、私企業の廃止にかゝる事由が要求さるべき限りではない。

(6)  本件仮処分申請中賃金の支払を求める部分は保全の必要性を具備していない。即ち被控訴人等の多くは農家の未婚の青年であり、自己の収入によらなければ生計の立たない者ではないのみならず、控訴人は解雇言渡直後、別紙一覧表のとおり各一ケ月分の解雇予告手当と退職金を被控訴人等に支給し、被控訴人等はこれを受領しているものであるから、仮処分によつて賃金の支払までも命じなければならぬ必要性がない。

(7)  仮に賃金支払を命ずる必要性があるとしても、その必要性の存する限度は労働基準法第二六条の趣旨に準じ、せいぜい賃金の六〇パーセントの範囲内と解すべきである。

(二)  被控訴代理人の主張

(1)  控訴人の企業廃止は、経営担当者が経営意欲を喪失したことが原因ではなく、被控訴人等が結成している労働組合と対決する面倒さを避けようとして、形式的に法律上の企業主体を変更し、被控訴人等を控訴人の資本から追放しようとしてなされたものである。そうして商法第二五二条の「決議ノ内容」とは、その決議をなすに至つた決定的な要因を含めてこれを云うものと解すべきであり、右のような不法な意図が決定的要因となつて本件の解散決議がなされたものであるから、該決議は無効である。

(2)  仮にそうでなく、控訴会社社長小畑稔の経営意欲喪失の結果、真に企業廃止を意図して本件解散決議がなされたものであるとしても、企業廃止の自由は絶対的なものではない。すなわち民法第一条は私権は公共の福祉に遵うと定めて私権が私権として保護される範囲を画している。財産権が資本として社会づけられ企業として社会的活動を始めた以上社会は、この活動を前提として秩序づけられて行く、即ち、資本は労働と結んで生産を行い、労働者は資本と関係してはじめてその生存を全うするのである。憲法は右事実を踏まえて労働基本権を保障しているのであるから、私企業所有者に企業継続の義務ありとまでは言えないとしても、たゞ、企業が嫌になつたからやめるというが如き企業廃止の自由はないといわねばならない。従つて単に被控訴人の社長が経営意欲を喪失したとの理由で、労働者の迷惑をかえりみず、企業の廃止をなすことは許されない。

(三)  疏明関係〈省略〉

理由

一、控訴人が兵庫県加西郡北条町にある鉄工製品部品の製造等を目的とする株式会社であり、被控訴人等がいずれも控訴人に雇傭されている労働者であり、かつ三洋電機協力工場北条地区合同労働組合小畑鉄工所支部(以下組合と略称する。)の組合員であるところ、控訴人が昭和三五年一月八日被控訴人等に対し、解雇の意思表示をなしたことは当事者間に争がない。

二、そこで、本件解雇が被控訴人主張のような不当労働行為に該当するか否かを考察する。成立に争のない乙第一号証、同第三号証の一ないし二三、同第四ないし六号証、同第七号証の一ないし六、同第九号証、同第一一ないし一四号証、同第一五号証の一ないし三、同第一六ないし一八号証、当裁判所が真正に成立したと認める同第九、一〇号証に原審証人城田隆幸、同小畑稔、当審証人玉田忠夫、同高橋多恵知郎、同槽谷猪三、同小畑稔の各証言および原審ならびに当審における被控訴人村田正一本人の供述(いずれも一部)を綜合すると、つぎの事実が認められる。

(一)  控訴会社は本件解散決議当時の現代表取締役小畑稔の実父小畑鶴治が大正年間に個人企業として創立したものを、昭和二三年に資本金五〇万円の株式会社組織に改組したものであるが、株主ならびに役員ともに右小畑父子、家族を主体とするいわゆる同族会社であり、肩書住所に工員約八〇名を擁する工場を有し、主として三洋電機株式会社の注文により電気器具の部分品の下請製作加工等の事業を行つていたところ、昭和三三年一二月五日控訴会社従業員等により小畑鉄工所労働組合が結成された。(なお、昭和三四年九月他の三洋電機株式会社下請工場の三組合とともに三洋電気協力工場北条地区合同労働組合が成立し、小畑鉄工所組合はその支部となつた。)

(二)  右組合結成に際し、主導的役割を演じたのは年令的に若く、技術的には比較的未熟な工員達であり、主として係長以上の職場で指導的な地位にある年輩の従業員等はまつたく組合結成のための相談から除外されたところから、これらの者は組合に加入せず、組合に対しむしろ批判的な態度をとつていた。その後組合は昭和三四年三月中旬から四月上旬にかけ一律月間二、〇〇〇円のベース・アツプを要求して春季闘争を、同年六月上旬から七月下旬にかけ一時金日給四〇日分を要求して夏季闘争を、また同年一一月上旬から同年一二月二六日にかけ一時金日給四〇日分を要求して年末闘争を各実施し、それぞれ若干の成果を挙げた。しかし右各闘争中組合の闘争方針に批判的で、どちらかと言えば、控訴会社の経営方針に協調的な態度をとる非組合員等と組合員等との間に漸次対立的な感情がかもされ、それが闘争終了後にも固定されていくようになつた。そして、昭和三四年春期闘争のさい、非組合員二名が控訴会社工場で組合員から暴行を受け、刑事事件が発生し、また、同年七月頃夏期闘争中に組合の行き方に不満を感じて組合を脱退した一組合員に対し、組合員等が度を失した強硬、執ような難詰を加えたことがあり、さらに、同年秋頃組合員等全員は非組合員を友達に持たない旨の誓約書をとり交すようなことまで行われ、いきおい非組合員等も固まつてグループをつくるようになり、両者の分裂離反はますます深まつた。このような事態は当然職場の空気にまで反映し、組合員の中には職場で指導的な地位にある非組合員等に対し粗暴な態度をとつたり、また非組合員である上司の作業上の指揮に従わず、勤務時間に十分な作業をしなかつたり、上司の忠告に対し、かえつて多数を頼んで抗議し、あるいは作業中の非組合員に物を投げつけて作業を妨害するものがあらわれた。したがつて、職場の秩序が損われ、生産能率も昭和三四年七月頃からかなり低下して行つた。

(三)  前記のように、控訴会社においては組合が結成されて以来争議に終始していたうえに、従業員間のあつれきが深化し職場秩序も損われた結果生産能率も低下し、製品の納期遅延や品質不良を招来し、親会社たる三洋電気株式会社からの苦情も重なつてきたが、右事態に遭遇して、控訴会社社長小畑稔は次第に経営意欲を失い、昭和三四年秋頃から事業廃止を考慮したこともあつたが、控訴会社取締役高橋多恵知郎、三洋電機株式会社北条出張所長後藤某等の慰撫によりこれを思い止まり、同年末の前記年末闘争妥結後は、新年度からの再出発に一応の期待をよせていた。

(四)  ところが、非組合員等の中で部下である組合員等を指揮監督すべき立場にあつた職制達は、会社に対する自己の職責を全うし得ないことに責任を感じ、あるいは前記不明朗な職場の空気に耐え難いとして、昭和三四年一二月二八日頃係長柏木秀信ほか三名が控訴会社小畑社長宛退職届を提出し、小畑社長の慰留にも応ぜず、更に翌昭和三五年一月五日までの間に残りの非組合員のうちの多数が、順次退職を申出で同月六日にはついにその全員が退職を申出るに至つた。控訴会社工場は、おゝむね年令の低い技術的にも未熟な工員が多かつたため、右のように技術的に優れ指導的立場にある役職員全員が退職した場合には、事実上操業は困難であり、かつ、右退職者に代わる技術者を早急に補充することは、控訴会社のごとき中小企業においてはほとんど不可能なことであるため、小畑社長は、右事態に立到つて遂に工場の経営を廃止する決意をした。

(五)  そこで、控訴会社においては、昭和三五年一月五日控訴会社社長小畑稔ほか取締役三名出席して取締役会が開かれ、会社解散の方針が決定され、同年の操業開始予定日である同月七日小畑社長より従業員に対し解散方針を発表し、翌八日被控訴人等組合員全員に対し解雇の意思表示がなされた。次いで一月二九日株主総会が開催されて会社解散が決議され、その後控訴人主張のような清算手続が進行中である。

原審ならびに当審における被控訴人村田正一本人の供述中右認定に反する部分は措信せず、他に右認定を左右する証拠はない。

三、被控訴人等は、控訴会社の解散は全組合員を解雇して組合を壊滅することを目的としてなされた偽装の解散であると主張する。なるほど成立に争のない甲第二号証の二ないし六、原審における被控訴人宮長昭次、同下門義隆各本人の供述によりそれぞれ真正に成立したと認められる同第二号証の一および七、原審および当審における被控訴人村田正一本人の供述を綜合するとつぎの事実を認めることができる。

(1)  控訴会社社長小畑稔は右労働組合結成の動きを察知するや、その結成の直前である昭和三三年一二月四日同会社の朝礼会において従業員等に向つて「君等が組合を結成するのなら直ちに工場を閉める」と言明した。

(2)  昭和三四年四月五日春季闘争の際控訴会社と組合の団体交渉の席上において、小畑社長は「言うことを聞かないのなら工場を閉鎖する。」と言明した。

(3)  昭和三四年六月二四日夏季闘争の際、控訴会社と組合の団体交渉の席上において小畑社長は「これで気に入らんのなら他へ行つてくれ、わしもこれ以上工場を経営する気はないからビールでも飲んでさよならや、螢の光でも歌うてな」「君等は職安にでも行くか」と放言した。

(4)  控訴会社工場長小林秋夫、工場長代理玉田忠夫等を含む非組合員等全員が本件組合員等に対する解雇通告のなされる直前の昭和三五年一月四日、城崎温泉に赴き、同地の旅館に一泊した。

しかして右認定に反する証拠はなく、これらの事実に徴すると控訴会社社長小畑稔は、組合の存在ならびに組合活動をかなり嫌つており、組合えの対抗手段として屡々事業場閉鎖をほのめかしていたのであるから、前記のように小畑社長主導のもとになされた事業廃止ならびに解散の方針決定は前記小畑の発言と符節を合するごとくである。しかしながら、前記非組合員の職制等が退職を申出でたことにつき、同人等と会社側間に何等かの意思の連絡があつたことを肯認するに足る資料はない。この点につき、被控訴人等援用の甲第一号証、同第二号証の一ないし七、原審における被控訴人下門義隆原審ならびに当審における被控訴人宮長昭次、同村田正一各本人の供述中にはそれぞれ非組合員等が組合をつぶすことを目的として、会社側と意思を通じて退職申出をなしたものである旨、あるいはそのことを疑わしめるような事実のあつた旨の記載もしくは供述部分があるが、いずれも、未だ臆測の域を出でないもので直ちに措信しがたい。むしろ前段二で認定した控訴会社解散の経緯からみると、本件解雇は、控訴会社社長小畑稔が組合結成以後社内における組合員と非組合員間の深刻なあつれき、職場秩序の乱れ、それに基因する生産能率の低下のため次第に経営意欲を失いつゝあつたところに昭和三四年末から翌年初頭にかけて控訴会社工場における指導的地位にある技術優秀な役職員全員等が退職申出をなす事態に遭い、もはや工場操業継続が殆んど不可能なのを見て取つて、全く経営意欲と自信を喪失した結果、控訴会社の事業廃止、解散の方針を決定し、それを前提としてなされた解雇とみるのが相当であつて、被控訴人主張のような組合員全員を解雇して組合を壊滅する意図を決定的原因とした解散にもとづくものではないというべきである。しかして、前認定の解散後の清算手続の進行にかんがみても、右解散を偽装のものとみる余地はなく、成立に争のない甲第一号証、前掲甲第二号証の三ないし七の各記載や原審ならびに当審における証人村田正一、同宮長昭次の各証言、原審証人下門義隆の証言によるも前認定を左右するに足らない。しからば、本件各解雇は不当労働行為に該らないというほかはない。

四、被控訴人等は仮に小畑社長が真に経営意欲を喪失し、企業廃止をのぞんでいるとしても、企業廃止の自由は絶対的なものではないから、労働者である被控訴人等の迷惑をかえりみず企業の廃止をなすことは許されない旨主張しているが、前認定によつて明かなとおり控訴会社の本件企業廃止が経営意欲を喪失した結果によるものである以上、それが法律上許されないとするいわれはないから被控訴人等の右主張は採用することができない。

五、以上説示したところによつて明かなように、本件解雇の意思表示はいずれも有効であるから、右解雇の無効を前提とする被控訴人等の本件仮処分の申請は被保全権利を欠きこの点においてすでに却下を免れない。よつて右申請を認容した原判決を取消し、仮処分申請はこれを却下すべきものとする。なお、控訴人は仮執行の宣言を求めているが、本件は仮処分事件であつて、上告を許さないものであるから、仮執行の宣言はこれを附さないことゝし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九八条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 沢栄三 斎藤平伍 石川義夫)

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例